一般社団法人 清川しっぽ村に行ってみた

一般社団法人 清川しっぽ村に行ってみた
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神奈川県の山奥。清川村に「清川しっぽ村」という保護施設がある。しっぽ村では猫と犬の保護を行っており、現在犬は10数頭、猫は50匹以上施設で保護されている。

今回お会いした人は代表理事の吉島崇憲(たかのり)さんだ。ひょんな事からしっぽ村でどんな事を行っているのか、いろんなお話を聞くことが出来たので、ご紹介しようと思う。

しっぽ村の位置

まずしっぽ村の位置だが、神奈川県の中でも山奥の方にある。下記画像を見ていただくと分かる通り、東京からは遠い場所に位置している。

吉島さんがこの場所を選択した理由は、施設開設にあたり「犬」の鳴き声、「動物の匂い」に対する近隣住民の理解がどうしても必要だったからだという。施設の収容頭数を増やそうと思った場合、それなりの土地が必要だ。特にしっぽ村では犬の保護も受けている為、必然的に山奥になったようだ。

筆者はこの場所は動物にとっては自然環境に近い状態で飼育出来る為、よいかもしれないと考えたのだが、吉島さん曰く冬は雪が降る為毎年雪かきを行い、夏は動物がバテないように、部屋の中でエアコンを回し、外でも扇風機を回しているとのこと。

動物にとっていい環境は人間にとっても変わらない。環境整備はやはり大変のようだ。

動物診療車と猫バス

施設から200m程度離れた場所に駐車場があるのだが、そこでまず驚いた事がある。それは動物診療車の存在である。

しっぽ村では今でも原発事故で残された犬や猫の保護も行っているのだが、その活動が注目されたある時期にNHKに取り上げられた為、一時的に寄付金が集まった事があったようだ。

そのお金でもっと多くの保護を行えればということで、動物診療車を購入し、活動の拡大を行ったとの事。

保護団体は寄付で活動をする事が主であり、また一般社団法人(またはNPO)である限り集まったお金も一定以上はその活動のために使わなくてはならない。

従って、寄付が集まれば集まるほど豊になるというわけではない。お金が回りだすと更に助ける為に何が出来るのか、そういう事を常に考えて活動する必要がある。診療車があるからお金があるのではないようだ。

いつもギリギリの状態でやっているんです、と吉島さんがはにかみながら教えてくれた。事実、施設は「貰い物」や「人力で作ったもの」で埋め尽くされていた。

子猫部屋

最初に案内頂いた部屋は子猫の部屋だ。

ケージの下には各子猫のステータスがすぐに分かるように養生テープの上に記されていた。養生テープにはその子の体重だったり、保護された日にちだったり、おうちが決まっている事等、様々だ。

子猫は保護も譲渡も回転が早い為、常にメモ書きが必要のようだ。

子猫の回転が早い理由は、猫の繁殖力が強い事と、子猫を欲っする人が多い事が理由だろう。子猫だけでも10匹いかないくらいだろうか、そのくらい保護されていた。

 

成猫の部屋

次に案内頂いた場所は成猫の部屋。

一部の猫はケージに入っているが、そういう猫は保護されたばかりだったり、まだ人に慣れず威嚇してしまう猫だ。その中には3本足の猫もおり、彼らは初めて見る筆者にずっと威嚇をしていた。これは人間が虐待をしたのだと、その目を見て感じとった。

人に慣れている猫は部屋を自由に歩き、遊んでいる。キャットウォークが部屋中に作られ、一見狭く感じる部屋もとても広く運動が出来るようにあらゆる工夫が施されている。

また、部屋の一部は外へと繋がっており、まるで秘密基地のような、猫が好きそうな環境が整っている。この作りは猫飼いとしてワクワク感を擽られる。吉島さん曰く、全部手作り。ボランティアの方々に感謝、だそうだ。

 

とても人懐こく性格のいい黒猫さん
その後ろには猫しか入れないルートがある(スタッフは別の扉から入ることが出来る)
猫しか入れない場所は外へと繋がっている
脱走し迷子になるような作りにはなっていない
これもボランティアさんの手作り

全ての扉は2重扉になっており、見学の人がミスをして扉を開けても外に飛び出せないような工夫がされている。猫飼いの人は2重扉の良さが分かるだろう。また、部屋の前にはアルコール消毒も設置されており、必ず入る前に手に噴射することを徹底している。

猫エイズ持ち専用部屋も

猫には猫エイズ(FIV)という病気がある。人間のエイズと同じで免疫が下がり、感染もする病気なのだが、空気感染や接触感染するような病気ではない。一般的に感染力は著しく低いと言われている。

猫エイズのキャリアを持っているからといってすぐに死んでしまうかといえばそうではなく、中には発症せずに長生きする猫も存在する。とはいえ一般的な猫よりも寿命が短い事は確かだ。

猫同士喧嘩をしてそこから感染する可能性等も考慮し、キャリア持ち専用の部屋を作っているようだ。保護施設のような多頭状態が常套化している場合、特に感染症には敏感にならざる負えないだろう。

それでもケージだけで分けず、ここでは部屋を作って完全に分ける事が出来ている。これは土地が広いところを選択し、快適な部屋を作った吉島さんやスタッフの努力の賜物だ。

専用部屋でくつろぐ子
猫の形をした穴から外に出ることが出来る
外はもちろん金網で囲まれているが、日向ぼっこをしたり
虫と遊んだり、外で触れ合う事ができる環境を整えている
猫エイズ持ちであっても見た目は一切変わらない
かわいい寝姿

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犬専用エリア

次に案内頂いた場所は、犬のみが保護されている犬専用エリア。

犬は猫よりも強い縄張り意識を持つ動物であるため、よほど仲の良い犬以外は1匹1匹に庭が与えられているようだ。

犬専用エリアの入り口部分には伝言板が設置されていた。しっぽ村では新しい子が入った場合、この伝言板に犬も猫も記している。そこには「祝」と書かれている文字があった。

しっぽ村に来て命を救われたのだという「祝」、もしかして捨てられたかもしれない、虐待されたかもしれない、そんな子が救われた「祝」。「祝」でも様々な過去はある。しかし、ここに来たみんなは一律「祝」である。

幸せはここからはじまる。そういう事を考えた。

新しいお友達 「祝」

犬専用エリアには工業用の強力な扇風機も設置されており、犬にとっても過ごしやすい環境を整えている。聞くとこれも貰い物だという。

貰い物で成り立っている

犬は噛んでしまう動物だ。私も昔手を犬に噛まれた事があり、今でも吠える犬は怖い印象を持っている。彼らも知らない人が入ってきたら怖い。吠えるのだ。

そんな子達の事を少しでも理解してもらう為に、見学者やボランティアスタッフさんへ、注意が必要な子には大切な事が書かれていた。少しでも理解してもらえるようにという配慮を感じた。

その子のことが分かるように

年を取った犬も2匹いた。ほとんど感覚だけで生きており、目がほとんど見えず、耳もあまり聞こえていない様子で足も悪いため部屋をフラフラと歩いていた。

私と話しながら、老犬の餌が残っていたことに気づいた吉島さんは、老犬に餌を与えはじめた。まず周りのオシッコを拭いた後、皿を持ち、手で食べさせ、そして水場まで連れていく。高齢のせいかただのお皿に入った水でちょっと溺れそうになる。

自分でうまく食べることが出来なくなってしまった老犬

年を取った犬が何故保護施設に入るのか詳細な経緯を知ることは出来ないが、「育てられなくなってしまった」犬を捨てる、あるいは保健所に持っていく、というひどいケースもあるだろう。(意地悪なことを書くと、捨てた当人が老人になった場合に家族に捨てられなければよいが)

写真の老犬は高齢で施設に入った為、飼い主が見つかる可能性は低い。おそらくこのままここで天寿を全うすると思われるが、それでも運が良いのかもしれない。実際は施設に入れない子の方が多いだろう。やはりここに入った子達は伝言板通り、みんな「祝」なのだ。

破産した保護団体から来た子も

静岡で破産してしまった保護団体から来た子もいた。とてもかわいいプードルで、この子はすぐに飼い主が決まり、準備中のようだ。大きな犬より小さな犬の方が人気がある実情は、日本の住環境を考えると致し方ないのかもしれない。

保護施設同士はあまり繋がりがない。愛情が強い故に、それぞれのやり方があるようで、保護施設が潰れてしまった場合は保健所を通して知る場合が多いようだ。

寄付金というパイを食い合う事を考えると、うまくいかない団体の場合は大抵が資金が底をついたケースが多い。

各団体に寄付金が等しく分散されればいいのだが、そういうわけにもいかない。中には寄付金を集めても用途がずさんな団体も存在している。経営していく為にも真摯に活動を行わないと、寄付金も集まらない。宣伝力も必要だ。

可愛いプードルを見ながら、そんな事を考えていた。

大量のタオルと、提供頂いたペットフード

沢山の人から提供されたタオルが山積みの部屋があった。いわばタオル部屋。動物に使うタオルは何枚あっても困らないだろう。

また、提供されたペットフードを格納している部屋も。そこには事細かに猫や犬の為のメモ書き、またスケジュール等が記録されていた。

タオルもペットフードも寄付で成り立っているのである。

診療所でいち早くケアが出来るように

しっぽ村は施設に診療所を設けている。ボランティアで来てくれる獣医師の先生が土日等に通っており、診療所を構える事で薬やワクチン等を安く購入、または打てる等、そんな事を出来るようになったそうだ。皮膚病の犬もいた為、毎月かかる薬代のコストダウンは必要な事だっただろう。

診療所の獣医師の中には元々ボランティアで来ていた学生さんがそのまま獣医師になり、現在もボランティアとして活動頂いているケースも。人間関係で成り立っているのである。

しっぽ村診療所

慰霊碑を設置

保護をしているとそれだけ死にも直面してしまう。しっぽ村では慰霊碑を飾り、彼ら、彼女らを追悼している。

動物慰霊碑

亡くなった子は動物の合同葬儀を行う他、山奥である事を活かしその土地の地面に大切に埋葬する事もあるそうだ。

時には森に住むイノシシや動物が掘り起こし食べてしまう事もあるため、出来るだけ深く埋めるようにしているとのこと。「これも食物連鎖なんです」吉島さんはそう語った。

保護活動だけでなくTNRも

しっぽ村では地域で定期的にTNRを行っている。TNRとはトラップ・ニューター・リリースの略で、特に猫の保護に対して一般的に使われる。捕獲し、不妊手術を行い、元の場所に返す事を言う。

TNRは野良猫の繁殖を防止し、悲劇にあう猫(赤ちゃん猫の死亡)や、繁殖時のスプレー等による地域社会への環境ダメージを減らす活動にも繋がると言われている。しかし30匹以上の猫のTNRを毎月行っているが、それでも足りないそうだ。しっぽ村の子猫の部屋の早い回転を見てもそれは伝わってきた。

猫の繁殖力はとても高い為、猫ではあるがねずみ算式に増える事を防止するためにも、TNRを根気強く行う事が重要なのだろう。その活動に冒頭で紹介した診療車や猫バスが役立っている。

しっぽ村で思ったこと

しっぽ村は譲渡を無料で行っている。譲渡の際、ワクチン代やフード代等を請求しないとやっていけない団体も多いのだが、無料を成立させる為に、寄付金や提供物で出来るだけ賄うようにしている。

寄付活動をお願いするために駅で一日中呼びかけたり、ネットで受け付けたり、本当にその活動は様々だ。話しながら「寄付金を呼びかける時は大抵が大変な時なんです」と笑って話していた(それは正に今なのだが…)。

代表の吉島さんは、小学校に行って紙芝居を行う事もあるそうで、その話し方はとても穏やかで、説得力がある。お話の中で、この方は「人間力」があるという事をとても感じた。私も駅でたまたま吉島さんと出会い、つい話し込んで、お伺いする事となった。

保護団体は、その活動に賛同する人がいなければ続けることが出来ない。しっぽ村も同様だが、日々のコストダウンの為に田舎であるという土地を活かした「手作り」を行う事で、設備や施設に関わる費用をなるべくかからないように工夫している。

実は土地には水が引かれていない為、週に数回水を汲みに行っている。水を引くよりその方が安いのだ。次はソーラーパネルがあれば、それを設置して電気を作りたい、とのこと。ちょっとしたスローライフである。もしかしてスローライフビジネスと動物の保護団体はシナジーがあるのかもしれない。

人生に悩んでいる方が訪れ、しっぽ村に来て動物に触れあう事で何かを見つけていく事もあるそうだ。

是非皆様も興味をお持ちであれば、しっぽ村に行ってみてはどうだろうか。犬や猫に触れ合えるだけでなく、その考え方にも関心を寄せることが出来る。そして可能ならば是非寄付等行って頂ければと思う。

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